評価:
新書館
¥ 588
(2007-03)
元彼カレ
玉木 ゆら
<三角関係><受け1、攻め2><浮気症バイ攻め×恋愛小説化受け←カメラマン元彼攻め><3P>
最近、三角関係物、あくまでもいい意味で地味にリリースされている感じが凄く心地いいです。もともと客を選ぶ題材だという認識はしていますが、流行になることはないけれど常にニーズがある、という感じで定期的に供給されると凄く嬉しい。
本作はいろんなアレンジがある中では清々しいまでの三角関係だと言えましょう。三角関係好きーの私にとってはある種の爽快感すら覚えました。キャラクターにはそれぞれちょっと癖があるので三角関係以前に人を選びそうな気がしますが、だからこそこの一筋縄ではいかない結末なのかなと思いました。
作者にとっての初文庫(投稿作)らしいですが、そんな後書きを知らなかったら新人さんだなんて想わないままに居たと思います。(というか、そもそも本だけを読んで新人も何もわからないかも)
あらすじ:27歳と年齢の割りにはどうやら乙女な作品を書いているらしい恋愛小説化の受けは、今の彼の浮気癖に悩んでいた。しかも相手は女で元々ノンケだった彼を想うと責め切れない気もするが、やっぱり浮気は許せない。攻めがそもそもそういう相手に本気ではなく単なる遊びだと割り切っていたとしても。帰ってくるのはお前のところだと、言われても。何度言っても効き目のないお願いをまた裏切られた時、受けは別れを決意し、その為にマンションに攻めを呼んだ。ところが、そこへ現れたのは二年前にカメラマンの仕事で突然海外へ行って姿を消した元彼だった……。
◇
やしきゆかりさんのキャラクターがそれぞれ癖のあるキャラクターを随分イメージアップしていると思います。
まず一番の曲者は、なんといっても浮気症の攻めでしょう。どうして作者が一人の攻めをこういった極端な性格にしたのかは作者のみぞ知る、な訳ですがかなり嫌な奴に書かれています。そもそも受けとの出会いも偶然が重なって、ある意味縁があるといえるのですがノンケのモテ男で女には困らず単なる性の興味本位で受けといたしてしまう、のが始まりです。その後、自分でもわからないまま女には感じない独占欲を覚える事から受けと正式な恋人となるのですが、それはまるでそもそも元彼に想いを残す受けへの独占欲、征服欲が刺激されたかのようです。もしかして、受けが完全にフリーだったり受けから攻めに惚れていたらここまで執着は覚えなかったのかも、という感じがします。
とまあ、想像部分には答えが出ないのですが、この辺りはキャラクター的に破綻がなくって頷けるのですが、やっぱりいくら元ノンケとはいえ、「たまには女を抱きたい」という理由で浮気をする攻めというのはBL界ではかなり顰蹙を買うキャラクターだと想うんです。実際、そんな攻めに振り回されているくらいならさっさと別れちまえ! と紙面に向かって内心咆えておりました。
でも、読み進めるうちに物語としてだんだんこの駄目攻めを許容してきてしまっていたんです。
そもそも受けが男なのに男女物、しかも同年代の女性編集に今時ないだろみたいに突っ込まれる乙女な作風が売りの恋愛小説家なんです。別に職業差別をする訳ではありませんが、やっぱりどこかぽわんとした危うさがあって、いわゆる地に足がついてキッチリ暮らしています! みたいな硬さはないんですよね。そう、彼とつきあう相手というのはそもそも鏡のような存在で、結局類友という訳でもないでしょうがやっぱり同じようなちょっと変わった人が寄って来ている、自然と選んでいるんじゃないか、となんか納得していたのです。
もし、こういった設定がすべて計算だとしたら、ほんとうにこの作者は凄いなーと想ってしまいます。
一方、元彼はそもそも知り合いの紹介で出会っているのですが、ゲイとはいえお互い決してモテなくはないだろう事を想うと、その紹介の縁も含めて出会うべくして出会ったと言えます。
まるでちょっと仕事に行ってくる、といつものように家を出た攻めでしたが、他の友達に聞いたら海外に行って二年くらいは戻らないということに受けは呆然とします。そのショックのタイミングで今の浮気症彼に出会っているのですが、だから最初は受けは荒れていました。そんな放浪攻めを忘れるのには時間が必要なくらい、受けにとっては大切な恋人だったんです。だからこそ、ひょっこり戻って来てはい復活ともいかないし、むしろ喜べない。ここまでの受けの思考には一切違和感はありません。
放浪攻めはそれなりに反省をしています。離れて判る存在の有り難味。後悔が強いから今度こそ受けを離さない。
ところが受けにはすでに彼氏がいるんですが、さてそんな三者が顔を付き合わせた時、何が結果として用意されているか、バレになるので明記しませんが三角関係の地雷といえばもうお察しだと想うので、苦手な方はご注意を。
私はこの結末は決して地雷ではないので、受け入れる事に問題はないのですが、結果よりは経緯が気になります。攻め二人はそれぞれの利害一致でよしとしますが、やっぱり受けはそもそも今彼とは別れようとしていて、元彼とは復縁なんてとんでもない、というハズだったのにここまで流されるかなー? と。
好みの問題もあるんだとは思いますが、いくら皆類友だとしても受けのキャラクターは三人の中では何気に一番常識派、というのがあるんじゃないかなーと想っていたので、ここまでごっそり流されてしまったのには微妙に違和感が残りました。そこの受けの落としどころにもうちょっと説得力があったら、マイ・ベストオブ○Pになりましたね(笑)
ところで、私は二人に挟まれてうんうん唸っている受けの様子を読みながら、横恋慕コイ、横恋慕コイ! とダークホースの登場を期待してページをめくっておりました(笑)
そうしたら、本文の攻めズの会話で「いつ横からとられるかわからないし」というような会話があって、嬉しかったです。そうそう、攻め(達)が常に目の前の登場人物だけを意識しているだけでは足りないんです。見えない敵の存在が認められることって意外と小説の中では見かけないので受けがどんだけ魅力あるように少なくとも攻めズが考えているのか、というスケールが感じられて萌えました。(アバタもエクボ、だとしてもいーんです)
◇
お話は、本編(彼と元彼の鉢合わせエピソード)、今彼との出会いエピソード、元彼をフィーチャーした過去、現在まぜまぜエピソードの三作で構成されています。視点換えの同じエピソードの攻めバージョン二作、じゃなかったところもとってもこの作者に好感が持てました。(あれは好みの問題ではありますが、私は損した気分になる派です)
同人とかやられていたのかなーと想ってサイトを検索してみたのですが、すぐには見つけられなかったので情報がほとんどないのが残念ですが、他の作品もぜひ読んでみたいと思いました。
⇒ 未経験 (08/05)
⇒ とこちま (07/22)
⇒ めたぼ (07/15)
⇒ 黒きとう (07/01)
⇒ ばいきんまん (06/13)
⇒ 志波康之 (01/16)
⇒ 桃医 (01/10)
⇒ オリンキー (01/03)
⇒ 玉木よしひさ (12/29)
⇒ まろまゆ (12/20)